個人事業者の税務調査対策~家事関連費~

2026/09

家事関連費とは?

事業所得、不動産所得及び雑所得の金額を計算する上では、「総収入金額に対応する売上原価その他その総収入金額を得るために直接要した費用の額」と、「その年に生じた販売費、一般管理費その他業務上の費用の額」を必要経費として差し引くことができます。

支出した金額のうち、家事上の費用は必要経費になりませんが、個人事業者の業務においては、一つの支出が家事上と業務上の両方にかかわりがある費用となるものがあります。これが「家事関連費」です。

必要経費算入の要件

家事関連費のうち必要経費に算入することができる費用は、次の要件を満たしたものとされています。

  1. 支出の主たる部分が業務の遂行上必要であり、かつ、その必要である部分を明らかに区分することができること
  2. 青色申告者の場合、1.のほか、取引の記録等に基づいて、業務の遂行上直接必要であったことを明らかにできること

1.の「主たる部分」とは、業務の内容、経費の内容、家族や使用人の構成、店舗併用の家屋その他の資産の利用状況等を総合勘案して判定します。

また、2.の「業務の遂行上直接必要」であるかどうかは、その支出する金額のうち、当該業務の遂行上、必要な部分が50%を超えるかどうかにより判定します。ただし、必要な部分の金額が50%以下であっても、その必要である部分を明確に区分することができる場合は、当該必要である部分に相当する金額を必要経費に算入することができます。

按分基準

特に家事按分が必要となるのは、「住宅関係費」、「水道光熱費」、「通信費」、「車両関係費」です。

これらの費用のうち、プライベートの部分と業務部分を実額で区分できるものは実額で按分しますが、区分が難しい場合は、一般的に、業務で使用している「面積」や「日数・時間」などを基準に按分計算しています。

なお、按分計算は費用の内容に応じて支払いの都度又は毎月末・年末のいずれに行っても差し支えありません。

按分計算例

ここまでの要件と按分基準を踏まえ、一般的に行われている按分計算の方法と、その計算例をみていきます。

なお、表の仕分例では、費用の全額をいったん必要経費として計上したうえで、家事関連部分を「事業主貸」に振り替えています。「事業主貸」とは、事業のお金を事業主個人が使用したことを示す勘定科目です。このように仕分処理することで、最終的に必要経費に算入するのは、業務に対応する部分のみとなります。

(1)住宅関係費

自宅が賃貸物件の場合、支払っている家賃・管理費・共益費が按分対象の費用です。一方、自宅が自己所有物件の場合、建物の減価償却費・固定資産税・住宅ローンの支払利息が按分対象となります。

住宅関係費は使用面積・使用日数又は使用時間の割合で按分計算します。【按分計算例1】

(2)水道光熱費

電気代、水道代、ガス代が按分対象の費用です。

水道光熱費は使用面積・使用時間又は使用日数の割合で按分計算します。【按分計算例2】

(3)通信費

固定電話や携帯電話料金、インターネット使用料が按分対象の費用です。

これらは通信明細などにより使用料を実績把握して按分計算することが可能ですが、業務の使用時間や日数の割合により按分計算することも認められています。【按分計算例3】

(4)車両関係費

車両の減価償却費、ガソリン代、駐車場料金、自動車税等、車両保険、車検費用などが按分対象の費用です。

車両関係費は使用日数・使用時間・走行距離などの割合で按分計算します。【按分計算例4】

【表】按分計算例

  対象費用 按分基準 計算例 仕分例
租税公課 使用面積 ・年間建物固定資産税100,000円、建物面積100㎡
➡うち30㎡を業務に使用している場合
100,000円×30㎡/100㎡=30,000円
租税公課100,000円/現預金100,000円(按分前)
↓(100,000円-30,000円の残額が家事関連費)
事業主貸70,000円/租税公課70,000円(按分後)
水道光熱費 使用日数 ・月額電気代50,000円
➡週3日・月15日業務に使用している場合
50,000円×15日/30日=25000円
水道光熱費50,000円/現預金50,000円(按分前)
↓(50,000円-25,000円の残額が家事関連費)
事業主貸25,000円/水道光熱費25,000円(按分後)
通信費 使用時間 ・月額インターネット使用料15,000円
➡1日8時間・週40時間・月200時間業務に使用している場合
15,000円×200時間/(24時間×30日)≒4,000円
通信費15,000円/現預金15,000円(按分前)
↓(15,000円-4,000円の残額が家事関連費)
事業主貸11,000円/通信費11,000円(按分後)
車両関係費 走行距離 ・月額走行距離2000㎞、月額ガソリン代23,000円
➡月150km業務に使用している場合
23,000円×1500km/2000km≒17,000円
車両関係費23,000円/現預金23,000円(按分前)
↓(23,000円-17,000円の残額が家事関連費)
事業主貸6,000円/車両関係費6,000円(按分後)

按分のポイント

(1)按分の基準が合理的であること

具体的な按分割合を定めた法令の規定はありません。事業の実態に応じて、合理的に設定された按分基準であれば適用が認められます。逆に、明確な根拠がなく曖昧に割合を定めて按分している場合は、税務調査で否認されるリスクが高まります。

(2)証拠書類によって按分の根拠を説明できること

なぜその按分割合にしたのか、証拠資料に基づいて説明できることも重要です。具体的には、支払金額を明らかにする領収書や請求書のほか、「建物の平面図など事業使用部分を明らかにする資料」「業務日誌などの作業時間を明らかにする資料」「電話の通信明細や車両の走行記録など使用実態を明らかにする資料」です。証拠書類の裏付けがない場合は、税務調査で否認される恐れがあります。

(3)毎年継続して適用すること

いったん適用した按分基準は毎年継続して適用することが重要です。事業実態に変わりがないにもかかわらず、按分基準を安易に変更することは、課税所得金額や納税額を恣意的に調整しているとして税務調査で否認される恐れがあります。

まとめ

個人事業者の税務調査では、家事関連費は確実にチェックされる項目です。これを前提に按分基準を定め、資料を日頃から整備する必要があります。

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