匿名組合に関する課税

2016/08/26

日本公認会計士協会の報告書「事業体に対する課税形態と実務上の問題点について」(平成23年8月)から抜粋しました。
参考になると思いますが、組合に関する税制は不透明なものが多いですね。「人格なき社団」と「任意組合」の判断基準など含めて・・・・。

1.構成員課税(パス・スルー課税)
・任意組合または匿名組合は法人格を有しておらず、一種の契約関係であって団体としての性格は無い。
・したがって、法人税の適用上、任意組合または匿名組合は法人とはみなされず、法人税の納税義務者として取扱われないこととなり、税務上の取扱いについて、邦人税基本通達14-1-1から14-1-3等において限定的に言及されている一因と考えられる。また、法令の定めが置かれていないことから、任意組合または匿名組合の税務上の取扱いについての不安定さや、一般的に、実務上の慣行等に従って処理されている。
・匿名組合については、営業者と匿名組合員の1対1の契約であり、匿名組合契約書の作成により対応できる。

2.匿名組合に係る実務上の問題点

①計算期間
ア.契約により定めた計算期間
・実務上、減価償却計算の事務負担の増加等の問題がある。
イ.営業者の事業年度等
・匿名組合事業も営業者の事業であり、営業者は年1回一定の時期におこなう確定決算に基づき匿名組合損益の分配がおこなわれることに基づく。
・なお、匿名組合員の計算期間の決定に際しては、匿名組合における損益認識時期は匿名組合契約の計算期間の末日が属する事業年度(法基通14-1-3)とされているため、例えば、任意組合が匿名組合員となること等により、理論上は長期に渡る課税の繰延べが可能になるという問題もある。

②個人組合員の場合の損失の認識
・平成17年度改正により、個人の匿名組合員が匿名組合契約に基づき営業者から受ける利益の分配については、原則として雑所得とされた(所基通36・37共ー21)。
また、損失の分担については、匿名組合における損失の分担は現実の分担ではなく計算上の分担である(商法538)、したがって、各計算期間において損失の負担(金銭払込等による現実の出損)がない限り、計算上損失の分担がおこなわれ、計算上出資の価額が減少しても課税は未確定(匿名組合契約の終了時に確定)と考えられる。
このため、損失の認識については、各計算期間の各種所得の計算上必要経費に算入できないのではないかという問題がある。

③営業者報酬の計算(損益分配割合)
・匿名組合の営業者報酬の計算方法(損益分配割合)について、税務上明確な基準がないことから、複数の計算方法の中から個々の事情に基づき選択の上、契約の定めるところに拠っているのが実情。
ア.利益参加型(利益、収入に対する一定割合)
イ.固定報酬型(収入等に関わらず一定額(固定額又はコストプラス等)
ウ.ハイブリッド型(アとイの組合せ)
また、その計算基準についても、実務上以下の方法がある。
ア.会計基準
イ.税務基準
ウ.調整税務基準(社外流出項目や土地重課等に係る営業者の税負担相当額(調整額)を、グロスアップベースで匿名組合員に対する分配額から控除する方法
調整額=調整対象額×実効税率÷(1-実効税率)

④匿名組合員の地位(持分)の譲渡
・営業者と匿名組合員の1対1の契約であることから、匿名組合員の地位の譲渡に際しては、商法上営業者の同意が必要。
・営業者の同意のもと匿名組合員の地位の譲渡がおこなわれる場合、匿名組合財産に係る含み損益及び期間損益の反映において税務上二重課税等の問題が生じると考えられる。すなわち、匿名組合財産に係る含み益が50あるときに、匿名組合員AがBに匿名組合員の持分100を譲渡する場合、Aは譲渡により匿名組合財産に係る含み損益50を自らの課税所得として認識する。Bは譲受対価150で持分を取得するが、営業者からの利益分配時においてBは50の利益(現金)分配を受け、その課税所得を構成する可能性がある。

⑤営業者の地位の譲渡
・営業者と匿名組合員の1対1の契約であることから、匿名組合員の地位の譲渡に際しては、商法上営業者の同意が必要。
・営業者の地位の譲渡に関しては、税務上、営業譲渡に該当するか、譲渡対価は含み益を認識すべきか(簿価引継ぎか)、営業権は認識すべきか(認識する場合組合財産として償却可能か)といった問題が生じる。

⑥組合契約の終了
・匿名組合契約が終了したときは、匿名組合員は終了により営業者への出資金返還請求権を取得する(商法542)。また、匿名組合員に対する出資の払い戻しは、特約の無い限り金銭をもって支払いをすべきものと解される。組合財産に含み損益がある場合、含み損益を考慮した返還を受けるものと考えられる。

⑦匿名組合配当の関わる源泉税の取扱い
・過去利益が発生し(配当は未払い)、その後損失に転じて新たに発生した未収分と相殺される場合(その逆に、過去損失が発生しその後利益に転じて相殺された額が分配される場合)の源泉徴収の取扱いは、所得税基本通達181~223共-1における「支払」(みなし決済)に関する解釈に従って、以下の異なる取り扱いが考えられる。
ア.当該相殺につき、所得税基本通達181~223共-1に基づき源泉所得税を徴収すべきと考える。
イ.同通達の適用範囲をより狭義に解釈し、当該相殺につき同通達の「支払」に該当せず、源泉徴収税の徴収は不要と考える。

⑧源泉徴収対象利益の確定時期
・匿名組合に係る分配金の支払い(税務上の利益を超える金額の分配)を1年の計算期間中、キャッシュフローの範囲内で毎月おこなう場合、当該支払いの都度源泉徴収の要否、分配金でなく仮払金と考える場合、みなし利息の認識は必要かどうか、未分配利益が生じているケースでは、どのように源泉徴収額を計算する必要があるのか(先入先出法、総平均法等)といった問題が生じる。

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