墓地購入と債務控除

2020/3

最近では、樹木葬や散骨など、故人の弔い方も多様化してきました。

古くは、「個人墓」として一人一人が埋葬されていましたが、その後「家墓」として家単位で埋葬されるのが一般的になっています。”代々の墓を継ぐ” という意識も、少子化や核家族化の影響を受けて、かなり薄れてきました。

墓地について、遺言に記すケースもありますが、生前に自ら準備しておくという方が少なくありません。遺族に経済的負担をかけないという配慮もありますが、現預金を減らすことで相続財産としての評価額を下げるという一面もあります。

民法897条では、祭祀財産について他の財産と切り離し、習慣に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する、としています。

系譜、祭具及び墳墓がこれに該当するものとされていて、相続税法では、相続税の非課税財産となっています。一般の家庭での祭具・墳墓とは、仏壇やお墓が該当します。

都市部では、少なくなりましたが、旧家では敷地内に先祖代々の墓があることが珍しくなく、登記簿謄本上では、地目が「墓地」となっている土地を時々目にします。

お墓も、相続が開始した場合、個人所有墓地ならば、所有権移転登記をおこないますが、地目が「墓地」の場合、固定資産税評価証明書上”非課税”となり、登録免許税法でも”墳墓地に関する登記の非課税”という規定により、課税されません。

不動産取得税も、「墓地」については、非課税条項がありますので、課税されません。

仏壇やお墓は非課税財産だから、相続後に購入するのではなく、相続開始前に購入しておけば、相続財産の現預金が減り、相続税の節税になるわけですが、ローンで購入した場合はどうでしょう。

金融機関からの借入れやローンを利用して、墓地の購入費用を調達することを思いつく方がいるかもしれませんが、この場合の借入金・未払金は債務控除の対象にはなりません。

相続税非課税財産の取得・維持・管理のために支出する資金の調達のための借入金・未払金は債務控除対象外、と相続税法で明記されていますから、絶税プランにはなりません。

ひもつき関係が明らかな借入金・未払金のみ債務控除となるわけですが、知らないと思わぬヤケドを負ってしまうことになるので注意が必要です。

「寺院墓地」や「〇〇霊園」などの名前の霊園墓地のほとんどは、個人所有ではなく、「永代使用権」を設定するタイプです。

これらの墓地の実態は、寺院や霊園に届け出をおこなう”譲渡禁止の使用借権”ということになりますから、契約時、相続時に、登記することはなく、当然に登録免許税や不動産取得税の非課税規定とは縁がないことになります。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です